君空

所謂ケータイ小説が酷いという話は聞いていましたが、
どの程度のものなのか今一つ分からなかったので
「君空」というものを購入してみました。
著者の実体験を基にした「恋空」というものの、別視点版らしいです。
現在は亡くなっている、著者の元恋人の視点から進む話でした。


読み進めれば現れる　癌　セックス　妊娠　流産　シンナー　レイプ　浮気　死
余りにも分り易過ぎますね。
読者層が好みそうな要素を詰めるだけ詰め込んだような感じ。
しかし掘り下げが碌に為されないので、紙切れ一枚ほどの重みも持ちません。
あるのはただ、同じことの繰り返しと空虚さ感じる文章の羅列。

一貫性のないキャラクターの行動が読者を困惑させ。
一般的に悪とされるものこそ私達の美徳、とでも言わんばかりの人物を以て。
締め括られるのは、統合性の無い話の上に築かれたキャラクターの死。

この話で何を得ろと言うのか。
著者も著者ですが、出版社も出版社です。

そもそも、コンセプトと形式からして死者への冒涜と言っても過言ではなく。
著者は本当に、故人の元恋人が心から好きだったのか。
それ以前に、矛盾の多いこの話は、本当に「実体験にもとにした」話なのか。


ものの試しに購入してみる分には良いものだと思います。
購入層がどういう物語に惹かれるのか、多少の理解の手助けになります。
但し、理解は出来ても共感は出来ないでしょうし、
帯に書かれているような「感動」も出来ません。

それでも一つの話を完結させたというのは、良いことではないでしょうか。
400項弱という分厚さを用意する必要は無かったとは思いますが。